消化器内科

便秘

基本的な使用法

便秘薬には大きく分けて非刺激性と刺激性下剤の二種類があります。適切な量の非刺激性下剤を毎日使用し、頓用で刺激性下剤を使用する事が基本となります。

刺激性下剤は非常に強力な下剤のため毎日使用すると習慣性があり、さらには薬の効果が弱くなります。つまり刺激性下剤は数日出ない時に使用し、毎日漠然と使用する事は避けて下さい。

非刺激性下剤について

  1. 酸化マグネシウム
    よく使用される下剤ですが、しばし高マグネシウム血症を起こすことがあります。高齢者や腎機能の悪い方は減量して行い、定期的な採血でマグネシウム濃度を測定します。
  2. ルビプロストン(アミティーザ)
    小腸に働きかけ腸液の分泌を促進させ、便の水分含有量を増やします。最近低用量の錠剤発売され高齢者にも使用しやすくなりました。又、酸化マグネシウムのような電解質異常はありません。妊婦には使用できません。
  3. 胆汁酸トランスポーター阻害剤(グーフィス)
    大腸に流入した胆汁酸により水分分泌と大腸運動促進の二つの作用があります。1日2錠を食前に服用します。大腸内の水分分泌や運動が促進され排便しやすくなります
  4. リナクロチド(リンゼス)
    腸管内の水分分泌を促進し便通を改善、CGMPが求心性神経の落痛過敏を改善し腹痛、腹部不快感を改善します。1日1回食前投与。
  5. 漢方薬
    体力が中程度以下の高齢者には麻子仁丸、体力が中等度以上の方に桃核承気湯など個々の状態に合わせて処方しますのでご相談下さい。

胆石、胆嚢ポリープ

いずれも腹部エコー検査発見でます。胆石は胆汁の中のコレステロールが胆嚢の中に凝縮してできるものです。肥満気味、脂っこい食事が好きな方に多くできます。胆嚢炎や胆嚢癌の原因になります。薬で溶かす胆石溶解剤などの治療が有りますが、胆嚢が正常に機能している事、小さなコレステロールポリープと条件が限られます。胆嚢ポリープとは胆嚢の中にできるポリープです。1cm以上のものは悪性の可能性ありますので精密検査必要です。

C型慢性肝炎

C型肝炎は血液を介して感染します。感染すると70%は自然排出されず慢性肝炎になります。放置すると肝硬変、肝臓癌へ移行します。感染しているかどうかを調べるのがHCV抗体検査です。HCV抗体陽性は一度感染したことを意味します。HCV抗体陽性の方には現在も持続感染している人と、治癒してウイルスが消失した方がいます。そこで次にHCV核酸増幅検査を施行し、これが陽性ですとC型肝炎に感染している事を意味します。

以前はインターフェロンが治療の中心でしたが副作用も強く、ウイルス消失も50~75%でした。最近では副作用少なく、消失率高い一経口抗ウイルス薬一が治療の中心となっています。

胃潰瘍、慢性胃炎、胃がん

ピロリ菌に感染すると胃炎、胃・十二指腸潰瘍など炎症を起こすことが知られています。ピロリ菌に感染している場合、一度感染しても60%以上の可能性で再発します。ピロリ菌を除菌する事により潰瘍のリスクは低下します。又、ピロリ菌は胃癌、萎縮性胃炎、血小板減少性紫斑病、胃MALTリンパ腫主な原因とされています。但し、ピロリ菌除菌で胃癌等の発生率は低下しますがゼロにはなりません。ピロリ菌が除菌された時点で、発見できない極めて小さな潜在的がんが出来てしまっているためです。従って除菌後も定期検査な胃カメラ検査は必要です。除菌に成功し安心し胃がん検診を受けないケースがあり問題となっています。

潰瘍大腸炎

潰瘍性大腸炎の治療の目的は、症状のある活動期を脱し症状のない寛解期へ導入する事です。寛解の確認には内視鏡の確認が必要です。寛解を維持し再熱を防止するためには薬(5アミノサリチル酸製剤一5-ASA製剤)を飲み続ける事が必要です。薬を飲み続けていた9割が寛解を維持してきましたが、飲み忘れが多かった患者さんでは4割にとどまりました。

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内服製剤の違い

名称 長所 短所
ペンタサ® ・錠剤と顆粒剤があり、顆粒剤は飲みやすい
・1日2回でよい
・下痢が激しいときでもある程度は薬効があると想定される
・500mg錠剤は大きくて飲みにくく、250mg錠剤は錠数が多くなる
・小腸で吸収されるため、それによる副作用がやや多い
アサコール® ・比較的飲みやすい錠剤 ・下痢が激しいときは、割れずにそのまま出てくる(ゴーストピル)ことがある
・1日3回はコンプライアンスが悪い
リアルダ® ・1日1回でよい
・最大量4,800mgと最も多く飲める
・遠位大腸〜直腸病変にも強い印象
・錠剤が大きい
・冷所保存
・副作用頻度がやや高い

ピロリ菌について

ピロリ菌は胃の表面を覆う粘膜の中に住みつく菌で、感染したまま放置すると慢性胃炎、 胃・十二潰瘍、胃がんを引き起こすことがあります。感染経路としては経口感染すると考えられています。

主に小学生以下で感染すると言われています。

ピロリ菌抗体検査について

ピロリ菌抗体検査とは、その数値により現在感染しているか、いないか。又は以前の感染いたかを判定する検査です。

★除菌後抗体価が陰性になるには数年かかります。そのため除菌歴のある方はこの検査は適していません。

  1. 3未満 陰性:ピロリ菌に感染していない。
  2. 3以上10未満 陽性:「疑陽性」10~40%は現在感染している。その他は以前の感染。専門医に相談。
  3. 10以上 陽性:現在感染している可能性高く。専門医に相談。

検査方法

ピロリ感染を調べる検査は様々で施設により検査が異なる場合があります。

  1. 内視鏡で胃粘膜を生検し顕検法、培養法、迅速ウレアーゼ試験といった検査を施行する方法。
  2. 尿素呼気試験:検査薬を服用し前後に呼気を取る精度の高い検査です。
  3. 抗体検査:中、尿中の抗体を調べる検査です。
  4. 糞便抗原検査:便中のピロリ画有無を調べる検査です。個々の状況に応じ最適な検査を提供します。

治療

現在一次除菌、二次除菌治療が保険適応となっています。三次除菌は自費となっています。 一時除菌治療は胃酸をおさえる(プロトンポンプ阻害剤)と2種類の抗生剤( アモキシリン、クラリスロマイシン)を組み合わせた多剤併用療法が行われます。これら 三種類の薬を一日2回7日間服用して頂きます。成功は、70~80%程度です。 現在は、プロトンポンプ阻害剤にかわりボノプラザンが現在主流となっており、除菌成功率は上昇しています。 治療終了後8週間以上あけてから除菌されているかを調べます。 一除菌で効果のない場合クラリスロマイシンをニトロニダゾールに変更し一日2回7日間服用、二次除菌をおこないます。二次除菌までの成功率は90%程度です。

除菌後の注意点

ピロリ菌がいなくなっても胃癌がなくなるわけではありません。除菌成功しても既に前がん病変となっている場合があります。そのため除菌後も胃カメラなど定期検査が必要です。